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アパレルの在庫管理の目安を上場22社で数えた|在庫日数と業態ごとの差

セントラルオフィス編集部公開日 約11分で読めます

スマートトリミングAIを開発している株式会社セントラルオフィスです。

服のネット販売を続けていると、棚に積んだ在庫が多すぎるのか、まだ足りないのか、迷う場面があるのではないでしょうか。

「アパレル 在庫管理」で検索すると、上位には在庫管理システムを売る会社の記事が並び、SKUが多くて季節ごとに売れ残るから難しい、という説明が続きます。

ところが、ほかの服の会社がどのくらいの在庫を持っているのかという数字は、どの記事にも出てきません。

数字が公開されている場所はあって、上場しているアパレルは決算のたびに在庫の金額を出しています。

たとえばワールドの2026年2月期の決算短信には、苦戦したブランドで「冬物仕入を戦略的に抑制」し、在庫の適正化を最優先にした、と書かれていました。

大手でも、在庫をどれだけ持つかは年ごとに手で調整しているわけです。

じゃあ、服の会社は売れる量の何日分くらいの在庫を持っているのが普通なのでしょうか。

そこで、上場アパレル22社の決算短信を開き、期末の在庫が売上原価の何日分にあたるかを数えました。

自分の店の在庫の量に目安がほしい方は参考にしてください。

服のネット販売の仕事の流れ全体は、アパレルECとはにまとめています。

結論:在庫日数を出して同じ売り方の会社と比べる

結論から言うと、在庫の目安は「何日分あるか」に直し、同じ売り方の会社の幅と比べるのが現実的です。

上場22社の在庫日数は49日から277日まで開いていて、1つの「適正な日数」を決められるほどそろっていなかったからです。

上場アパレル22社の在庫日数のまとめ。22社の中央値は123日で最短49日・最長277日。粗利率50%未満の6社の中央値は92日、粗利率55%以上の8社の中央値は175日。自分の店の在庫日数は同じ売り方の会社と比べる
見てほしいのは、粗利率で分けると中央値が92日から175日まで変わること

22社の中央値は123日で、年に約3回、在庫が入れ替わる計算になります。

ただ、粗利率が50%未満の6社は92日、55%以上の8社は175日で、売り方によって2倍近い差がありました。

なので、自分の店の在庫日数を月末に出し、安く仕入れて早く売る店なら短い側、定価に近い値段で時間をかけて売る店なら長い側と比べるのがおすすめです。

出し方は自分の店の在庫日数を出すにまとめています。

数え方:上場アパレル22社の決算短信

対象は、衣料の売上が中心の上場アパレルです。

低価格チェーン・SPAとセレクト・ブランドメーカー・スーツ専門店の4つの業態から候補を25社挙げ、そこから22社に絞りました。

ナルミヤ・インターナショナルとライトオンは、ワールドの子会社になって上場をやめたので外しています。

ジーイエット(旧マックハウス)も、売上に暗号資産の評価損が混ざっていて在庫と比べにくく、外しました。

数字は、2026年10月7日の時点で最新の、通期の決算短信から取りました。

在庫日数は、期末の棚卸資産を売上原価で割り、365を掛けた値です。

売上高ではなく売上原価で割ったのは、在庫が仕入れた値段で載っているからで、売上高で割ると粗利の高い会社ほど日数が短く出てしまいます。

棚卸資産が1行にまとまっていない会社は、商品・製品・仕掛品・原材料などの行を足しました。

決算期は会社ごとに違い、22社のうち17社が2月か3月の決算です。

ファーストリテイリングは8月決算で、2026年8月期の発表が10月8日なので、2025年8月期の数字を使っています。

AOKIホールディングス・パルグループホールディングス・青山商事・ワールド・夢展望の5社は、衣料の売上が全体の7割未満で、雑貨や飲食などほかの事業の在庫も含みます。

グラフでは、この5社に※を付けて棒を薄くしました。

22社の在庫日数は49日から277日

上場アパレル22社の在庫日数を業態ごとに並べた棒グラフ。低価格チェーン4社の中央値107日、SPA・セレクト8社の中央値118日、ブランドメーカー6社の中央値153日、スーツ専門店4社の中央値183日。最短はしまむらの49日、最長はルックホールディングスの277日
見てほしいのは、同じ業態の中でも日数が大きく開いていること

いちばん短いのはしまむらの49日で、いちばん長いのはルックホールディングスの277日でした。

業態ごとの中央値は、低価格チェーンが107日、SPAとセレクトが118日、ブランドメーカーが153日、スーツ専門店が183日です。

スーツ専門店は、衣料以外の事業が半分近いAOKIホールディングスを除くと、3社とも177日以上でした。

ただ、業態の名前だけで日数が決まるわけではありません。

同じ低価格チェーンでも、しまむらの49日に対して、婦人服のハニーズホールディングスは160日でした。

SPAとセレクトの中でも、パルグループホールディングスの65日からyutoriの195日まで、3倍の開きがあります。

業態で比べるより、何が日数の差を生んでいるのかを見たほうが、自分の店に当てはめやすそうです。

粗利率が高い会社ほど在庫を長く持つ

差をいちばんよく説明できたのが、売上に占める粗利の割合、粗利率でした。

粗利率の帯ごとに22社の在庫日数を点で並べた図。粗利率50%未満の6社は中央値92日、50〜55%の8社は中央値123日、55%以上の8社は中央値175日
見てほしいのは、粗利率の帯が上がるごとに中央値が長くなること

粗利率が50%未満の6社は中央値92日、50〜55%の8社は123日、55%以上の8社は175日でした。

安く仕入れて安く売る会社は在庫を早く回し、定価に近い値段で時間をかけて売る会社は在庫を長く持っている、ということです。

ゴールドウインの決算短信には、売上を積み上げるための値引きを抑え、「翌期の在庫の健全性を優先」したと書かれていました。

値引きで在庫を早く減らすか、粗利を守って在庫を持つかは、会社ごとに選んでいる判断だと分かります。

ただし、粗利率と日数はきれいな比例にはなっていません。

粗利率が57%のパルグループホールディングスは65日、60%のバロックジャパンリミテッドは90日で、粗利が高くても在庫の短い会社があります。

パルグループホールディングスは決算短信で、需要予測と発注の管理によって在庫回転率が上がったと説明していました。

粗利の高い売り方でも、仕入の精度を上げれば在庫は短くできるということです。

前期から10日以上動いたのは6社

では、在庫日数は1年でどのくらい動くのでしょうか。

ワールドを除く21社について、前期の在庫日数と比べました。

ワールドは期中にライトオンを子会社にしていて、前期と同じ形では比べられません。

21社の在庫日数の前期との差を左右に伸びる棒で並べた図。前期から10日以上動いたのは6社で、ルックホールディングス・TSIホールディングス・はるやまホールディングス・コナカ・バロックジャパンリミテッドが長くなり、夢展望が短くなった
見てほしいのは、21社中15社が前期との差10日未満に収まっていること

前期より長くなったのが15社、短くなったのが6社でした。

ただ、10日以上動いたのは6社だけで、残りの15社は10日未満に収まっています。

上場している会社の在庫日数は、1年でそう大きくは変わらないようです。

在庫の金額を減らしても日数は伸びる

10日以上長くなった5社のうち、バロックジャパンリミテッドとコナカは、在庫の金額そのものは減らしていました。

バロックジャパンリミテッドは在庫を6.4%減らしたものの、売上原価が18.0%減ったので、在庫日数は79日から90日に伸びています。

在庫の金額だけを見ていると「減らせた」と判断してしまいますが、売れる量がそれ以上に落ちていれば、何日分の在庫かはむしろ増えます。

月末の在庫を金額ではなく日数で見ておくのは、このずれに気づくためです。

在庫を絞りすぎると欠品が出る

反対に、大きく短くなったのが夢展望でした。

在庫の金額を40.0%減らし、在庫日数は162日から136日まで縮みました。

ところが決算短信を読むと、仕入の調整で「一部商品の供給不足」が生じ、売上の機会を逃したとあります。

在庫は少ないほど良いわけではなく、短くしすぎると売るものが手元に無くなります。

在庫の調整のしかたは3通り

決算短信の説明を読み比べると、在庫の調整のしかたは3通りに分かれていました。

  • 仕入を絞る:ワールドは苦戦したブランドで冬物の仕入を抑えた
  • 値引きで売り切る:TOKYO BASEは期末にファミリーセールなどで在庫を消化した
  • 値引きを抑える:ゴールドウインと青山商事は値引きを抑え、粗利を優先した

どれを選んでも、在庫日数か粗利率のどちらかが動きます。

小さな店でも、セールで売り切るか、次の季節の仕入を減らすかは、同じ判断になるはずです。

自分の店の在庫日数を出す

自分の店の在庫日数を出す3つの手順。1は月末の在庫を仕入値で合計(例300万円)、2はその月に売れた分の仕入値(例100万円)、3は在庫÷売れた分×30(例90日)。上場22社の中央値は123日
見てほしいのは、在庫も売れた分も仕入値でそろえていること

自分の店の在庫日数は、月末の在庫を仕入値で合計し、その月に売れた商品の仕入値の合計で割って、30を掛ければ出せます。

たとえば月末の在庫が仕入値で300万円、その月に売れた分の仕入値が100万円なら、300万円÷100万円×30で90日分です。

在庫を販売価格で数えると粗利の分だけ日数が長く出てしまうので、在庫も売れた分も仕入値にそろえてください。

気をつけたいのは、服の在庫が季節で大きく動くことです。

秋冬物を仕入れた直後の10月と、セールを終えた2月とでは、同じ店でも日数がまったく違ってくるでしょう。

上場22社のうち17社は2月か3月が決算期末なので、比べるなら自分の店も2月末か3月末の数字で出すと条件が近くなります。

在庫回転率で考えている方は、365を在庫日数で割れば換算できます。

123日なら年に約3回、92日なら約4回、175日なら約2回です。

在庫を外の倉庫に預けている場合は、在庫日数が長いほど保管料もかさみます。

物流代行の料金は、アパレル物流・発送代行の料金にまとめました。

この数え方で分からないこと

決算短信の在庫は期末の1日の数字なので、期中にどこまで膨らんだかは分かりません。

上場22社は店舗を持つ会社が中心で、在庫には店に並べている分も含まれます。

ネット販売だけの店が、同じ日数をそのまま目指す必要はありません。

※を付けた5社の在庫は、雑貨や飲食などほかの事業の分を含んだ数字です。

ワールドは2025年12月にライトオンを子会社にしたため、期末の在庫にはライトオンの分がまるごと入る一方、売上原価には12月以降の分しか入っていません。

そのぶん、ワールドの80日は長めに出ている可能性があります。

ファーストリテイリングは2025年8月期の数字で、10月8日に発表される2026年8月期とは違ってくるかもしれません。

まとめ

  • 上場アパレル22社の在庫日数は49日から277日で、中央値は123日(年に約3回転)でした
  • 粗利率が50%未満の6社は中央値92日、55%以上の8社は175日で、粗利の高い売り方ほど在庫を長く持っていました
  • 前期から10日以上動いたのは21社中6社で、在庫の金額を減らしても売上原価がそれ以上に落ちると日数は伸びていました
  • 自分の店の在庫日数は、月末の在庫(仕入値)÷その月に売れた分の仕入値×30で出せます

在庫が多いか少ないかは、金額を眺めているだけでは判断がつきません。

まずは今月末の在庫日数を1回出してみて、同じ売り方の会社の幅のどこにいるかを確かめてみてください。

同じ22社が100円売って何円残しているかは、アパレルブランドの立ち上げ手順で数えました。

よくある質問

参考情報源

各社の直近の通期の決算短信(確認日 2026年10月7日)。

#アパレル在庫管理#在庫日数#在庫回転率#適正在庫#決算短信