商品撮影のライティング|光の向きと数を変えて服のしわ・影・背景のむらを測った
セントラルオフィス編集部公開日 約12分で読めます

スマートトリミングAIを開発している株式会社セントラルオフィスです。
服を床に平置きにして真上から撮っていると、同じ部屋で撮ったはずなのに、背景の紙の片側だけが暗かったり、服の肩が白く飛んだりすることがあります。
撮影用のライトやレフ板を買うべきか、窓の光で足りるのか、迷っている方も多いのではないでしょうか。
パソコン工房のNEXMAGに載っているプロカメラマンに聞いた服の撮り方の記事では、部屋の電気を消して窓際の横からの光だけにすると、真上から撮っても服に影が落ちないと紹介されています。
ただ、窓とライトのどちらがよいのか、ライトなら何灯をどこまで離せばよいのかは、同じ服で光だけを変えて並べてみないと分かりません。
そこで、部屋と服と紙とカメラの位置を3DCGでまったく同じに作り、光の置き方だけを10通りに変えて、真上から撮った画像を比べてみました。
自宅や事務所で服を平置きにして撮っていて、写りが日によってそろわない方は参考にしてください。
撮影から仕上げまでの流れはアパレルの商品撮影の記事にまとめているので、ここでは光の置き方だけを扱います。
結論:窓の光の反対側に白い板を立てる
結論から言うと、平置きの服をそろえて撮るのに効いたのは、光をやわらかくすることではなく、紙の左右の明るさの差を消すことでした。
窓の光だけで撮ると紙の左端と右端の明るさの差は約1.2倍あり、反対側に白い板を1枚立てると約1.04倍まで縮まります。

反対に差が開いたのは1灯を1 mの所から当てた画像で、左右の差は約2.7倍、Tシャツの14%が真っ白に飛ぶほどです。
なので、窓のそばで撮れるなら、部屋の電気を消して服を窓の横に置き、反対側に白い板を立てるのがおすすめです。
手順とコツは次の4つにまとめました。
- 部屋の電気を消す:窓の光に電球色の天井の照明が混ざると、紙の左が青く、右が黄色く写りました
- 服は窓の横に置いて真上から撮る:窓の光だけでも左右の差は約1.2倍で、白く飛んだ所はありませんでした
- 窓の反対側に白い板を立てる:左右の差が約1.04倍まで縮まりました
- 窓が無ければ左右から2灯:左右の差は約1.06倍です。1灯で撮るなら、2 mまで離すと約1.6倍まで縮まりました

例外は、しわや生地の凹凸を見せたいカットです。
低い位置から横に光を当てると、しわの強さは窓+白い板の約5倍になりました。
試した10通りの光の置き方
再現に使ったのはBlender 4.5です。
3.6 m四方、天井の高さ2.4 mの白い部屋の床に、1.8 m四方の白い紙を敷いています。
服は白いTシャツと紺のニットの2点で、布の動きを計算するBlenderの機能で紙の上に落とし、平置きの形にしました。
服を置いたのは窓のある左の壁から1 mの所で、カメラは服の真上1.4 mから見下ろしています。
撮る人も全条件で写真の下側に立たせました。
カメラには写らないものの、光はさえぎる位置です。

光の置き方は次のとおりです。
- 天井の照明:直径50 cmの丸い照明を部屋の真ん中の天井に付けた(5000K)
- 窓:1.2 m四方の窓を左の壁の床から0.8 mの高さに付けた(6500K)
- 1灯:8 cm四方の小さなライトを、服の左上の方向から45°の角度で1 m離して置いた(5600K)
- ディフューザー:1灯の光を60 cm四方に広げた(明るさの合計は同じ)
- 白い板:90×60 cmの白い板を、服の中心から右へ62 cmの所に少し傾けて立てた
- 低い横光:50 cm四方のライトを、服の左上の方向から床に対して20°の低い角度で、1 m離して当てた
露出と色は、服を置かない紙だけの画像を同じ条件で作り、紙の中央が同じ明るさと色になるようにそろえました。
カメラの自動露出とオートホワイトバランスの代わりです。
10通りの結果

表の「左右の明るさの差」は紙の左端と右端の明るさの比で、1倍に近いほどそろっています。
「白飛び」はTシャツが真っ白に飛んだ面積の割合で、「しわの強さ」は大きいほどしわが目立つ数字です。
左右の差が小さく白飛びも0%だった3つのうち、窓+電球色の天井だけは色が左右で転んでいました。
一方で、服の周りの影は思ったほど差が出ていません。
服のすぐ外側の紙のうち暗い所の明るさを、何も無い紙を100として測ると、低い横光だけが54で、ほかの9通りは約84以上でした。
平置きの服は紙に沿って薄く広がっているので、低い角度から当てない限り、紙に落ちる影は小さく収まるのだと思います。
1灯は板を足すより離す方が効いた
撮影用のライトを1灯だけ買い、服の斜め上45°から当てる撮り方を勧める記事は少なくありません。
そこで、ライトを左上の1 mの所から45°で当てた条件を出発点にして、1つずつ手を加えていきました。

ディフューザーを付けても、左右の差は約2.7倍のままでした。
光の出る面を広げても、紙の左端は光に近く右端は遠いという位置の関係は変わらないためです。
白飛びは14%から12%に減っただけで、光の側の服はまだ白く飛んでいます。
次に、窓のときと同じ白い板を反対側に立ててみたものの、左右の差は約2.1倍までしか縮みません。
1 mの近さから当てた光に対しては、板の照り返しでは足りなかったようです。
それなら光そのものを離せばいいのでは、というのが次の試しです。
ディフューザーを付けたまま2 mまで離すと、左右の差は約1.6倍になり、白飛びは0.6%まで減りました。

1 mの所から当てると、光の側の袖は紙と一緒に白く飛び、どこまでが服なのか分かりません。
ただし、離した分だけ服に届く光は弱くなります。
紙の中央を同じ明るさにするのに、2 mでは1 mのときの約2.3倍の露出が要りました。
実際に撮るときは、ライトの明るさを上げるか、シャッター速度やISO感度で補うことになります。
もう1つの問題は場所です。
3.6 m四方の部屋ではライトが壁の外に出てしまうので、この条件だけ部屋の幅を4.5 mに広げて再現しました。
撮る距離が部屋に収まるかは、自宅で商品撮影する広さで畳数ごとに計算したので、そちらで確かめてください。
窓の光は白い板を1枚立てるだけでそろう
窓の光は、1灯とは逆に、もともと左右の差が小さい光です。

窓だけで約1.2倍だった左右の差は、反対側に白い板を立てると約1.04倍まで縮まりました。
窓は1.2 m四方と大きく、服から1 m離れているので、もともとの傾きが小さく、板の照り返しで埋めきれたのだと考えられます。
ソニーの[小物編]プロカメラマンによる撮影テクニックでも、光源の反対側にレフ板を置くのが基本で、厚手の白い紙でも代わりになるという説明です。
窓が無い部屋なら、同じライトを左右から1灯ずつ当てると、左右の差は約1.06倍でした。
ただし2灯の画像は、紙の四隅が中央より少し暗く写っています。
背景を真っ白に仕上げる方法は、白背景の商品撮影の記事で比べました。
天井の照明だけで撮ると服が少し暗くなる
部屋の天井の照明だけで撮るのは、いちばん手軽な撮り方です。
撮る人の影が服に落ちるとよく言われるので、この条件では撮る人を写真の下側に立たせ、人がいない画像と比べました。

服の上に人の影の形は出ませんでした。
撮る人が立つと服の明るさが100から93になり、全体が約7%暗くなっただけです。
今回の部屋は壁が白く、天井の照明の光が壁に跳ね返って回り込むので、影の輪郭がぼけたのだと思います。
照明がもっと小さかったり、カメラをのぞき込むように体を乗り出したりすれば、影が落ちることもあるはずです。
むしろ目立ったのは左右の差のほうです。
天井の照明は部屋の真ん中にあり、服は窓側に寄せて置いたので、照明に近い右側が明るくなり、左右の差は約1.3倍になっています。
部屋の電気を消すのは色が混ざるから
窓の光で撮るときに部屋の電気を消すのは、影より色のためでした。
窓の光に電球色(2700K)の天井の照明を足し、その明るさは紙の中央で窓の光の3分の1にしています。

左右の明るさの差は約1.08倍でほぼそろっているのに、紙の左が青く、右が黄色く写りました。
ほかの9通りでは、紙の左右の色の差はほとんどありません。
窓の光は左から、天井の照明は右寄りから届くので、紙の場所によって2つの光の混ざる割合が変わります。
ホワイトバランスは画像全体に同じ補正をかけるため、中央を合わせると、窓に近い左は青く、照明に近い右は黄色く残るわけです。
キヤノンのEOS R3のホワイトバランスの説明にも、画面に複数の光源があると赤みを取りきれないことがある、という注意が書かれています。
パナソニックのLEDの光源色の区分によると、JIS Z 9112の区分は電球色が2600〜3250K、昼白色が4600〜5500Kです。
部屋の照明が昼白色でも、窓の光(今回は6500Kで再現)とは色温度が違うので、窓で撮る日は消しておくのが確実です。
しわや生地を見せたいときは低い横光
低い横光は、服全体を見せる写真には向きません。
左右の差は約3.3倍、白飛びは17%で、どちらも10通りの中でいちばん大きい値です。
服のすぐ外側の影も、この条件だけ何も無い紙の約半分の明るさ(54)まで落ちています。
ところが、しわと生地の凹凸がいちばんはっきり出たのもこの光でした。

窓+白い板と比べると、しわの強さはTシャツで0.8から4.1に、ニットで0.6から2.3に上がりました。
パソコン工房の記事でも、布は縦横に編まれているので、横からの光で素材感が伝わると説明されています。
なので、低い横光は1枚目の全体の写真ではなく、生地に寄って質感を見せるカットにだけ使うのがよさそうです。
使う前の注意点
今回の画像はすべて3DCGで再現したもので、実物を撮った写真ではありません。
服の生地や紙の質感、光の広がり方は、実際の部屋とまったく同じにはなりません。
窓の光は、天気と時刻と窓の向きで変わります。
今回の窓は、直射日光の入らない曇りの日のような光にしました。
直射日光が入る窓では、パソコン工房の記事にあるように、レースのカーテンを閉めて光を広げてください。
数字は白いTシャツ1枚と白い紙1枚で測った値で、露出と色を紙の中央でそろえた後のものです。
服の形の整え方や、真上から撮る理由は、服の平置き撮影のコツを1つずつ変えて検証した記事で紹介しています。
まとめ
平置きの服を真上から撮るとき、写りの差を大きくしたのは、影よりも紙の左右の明るさの差でした。
窓の光の反対側に白い板を立てると約1.04倍、窓が無い部屋なら左右から2灯で約1.06倍まで、左右の差は縮まります。
1灯で撮るなら、ディフューザーを付けるより2 mまで離す方が効きました。
窓の光を使う日は部屋の電気を消し、しわや生地を見せたいカットだけ低い横光に切り替えてください。
撮ったあとに大きさや背景の明るさをどこまでそろえられるかは、商品画像を統一する方法にまとめています。
よくある質問
参考リンク
- パソコン工房 NEXMAG「服の魅力を引き出す撮影テクニック!」(2026-10-06 確認)
- ソニー「[小物編]プロカメラマンによる撮影テクニック」(2026-10-06 確認)
- キヤノン EOS R3 製品マニュアル「ホワイトバランス」(2026-10-06 確認)
- パナソニック「LEDの光源色はどのように区分されていますか。」(2026-10-06 確認)



